舌痛症
- 40-70歳前後の中高年の女性に多い
- 真面目で几帳面な性格の人が多い
- 銀歯や入れ歯などの歯科治療の後に発症することもしばしばある
- 舌の痛みやしびれは我慢できないほどではないが、1日中気になり、舌に神経が集中している感じである
- 口の中が痛いので、イライラしたり、他のことをやる気が削がれたりする場合もある
- 午前中よりも、夕方から夜にかけて舌の痛みやしびれが増悪する
- 食事や会話には支障がないことが多いが、食べ終わった後や長電話の後に舌の痛みやしびれが悪化することが多い
- 痛む部位が移動することがある。唇や口蓋(上アゴ)までピリピリ痛むこともある
- 口内炎の軟膏をつけたり、痛み止めやビタミン剤を飲んでも一向によくならない
- 歯科で何度も歯の先などを研磨しても舌にこすれる感じがとれない
- 口の中が乾いたり、「ザラザラした感じ」や味覚の変化(おいしくない、本来の味がしない)をしばしば伴う
- 不眠、肩こりや頭痛など自律神経症状を伴うことが多い
- CTやMRIでは特に脳の病変は認められない
舌痛症とは舌の先や横の方に、やけどのようなヒリヒリ、ピリピリとした痛みを慢性的に感じる病気です。
赤くなったりして炎症があるような所見は見当たらず効果的な治療がなかなか見つからないことも多いようです。
患者様の多くは内科、耳鼻科など様々な診療科を受診され、「異常はないのでお薬だして経過みましょう」と軟膏やうがい薬、うつ病の薬などを処方され、気休め程度の処置しかされない方が多いようです。
患者様の舌に傷や炎症がなければ、「舌痛症」と診断され、「うつ症状」やストレスなどが原因の精神的なものとみなされてきました。
それにより何年も舌の痛みに耐えて、受け入れるしかない状態の患者様がほとんどのようです。
舌痛症と口腔カンジダ症の鑑別
舌痛症は、40~50歳代の女性に多いとされており女性ホルモンとの関連も研究されています。
気絶するほどの舌の痛みではありませんが、重症になると夜眠れない、気になって作業に集中できない痛みになる場合もあります。痛みの症状には日によって波があり、朝起きて午前中は比較的落ち着いていますが、夜にかけて痛みを感じやすくなる方も多いようです。
一般的に舌痛症の患者様は唾液分泌低下によるドライマウスを発症されてる方が多いようです。
また、自律神経が乱れ、気持ちが前向きにならない、よく眠れない、頭が重い、肩がこるなどの症状もよく見られます。
舌痛症の主な症状
CASE 01舌の真ん中や先や横に「ヒリヒリ」した痛みや灼熱感が数週間から数年続きます。
「やけどをしたような痛み」「歯がこすれるような痛み」などがあることが多いです。
舌を検査しても原因となるような傷や炎症などは見つからないです。クリニックで血液検査しても特に異常値は認められません。三叉神経痛や舌咽神経痛の電撃痛とは違う痛みであり、末梢神経痛もないようです。
おしゃべりしたり食事中や趣味などに熱中している間は舌の痛みを感じないことが多いです。むしろリラックスして一人でゆっくりしている時に痛みが強くなることが多いです。 飴玉やガムなどを口にしておくと少し痛みがまぎれた感じがします。
舌痛症のその他の特徴
舌痛症の原因は、残念ながら、まだ解明されていません 。
以前はストレスなどによる、「心因性」の痛みではないかと考えられていましたが、近年では「特殊な神経痛」に近い病気で、痛みを感じる神経回路に障害が生じているためだと考えられるようになってきました。では、舌に炎症や潰瘍などの原因がないのに、なぜ痛みを感じるのでしょうか。この病気では、口腔の痛みの感覚神経が、「回線の混線」を起こしていると考えられるのです。
つまり、痛まなくてもいい時に、痛みの神経回路が勝手にバチバチと電気信号を発してしまう状態が起きているということです。
睡眠不足、体調不良や疲労などによって、この電気信号の活動が影響を受けるため、症状に波があると考えると説明がつきます。
従来、舌の痛みは何らかの刺激(口内炎などのキズや火傷など)が原因で生じるもので、そのような異常がない場合は、往々にして精神的な問題だと思われてしまう傾向がありました。
しかし、最近の脳科学の見識によると、脳は外からの刺激がなくても、痛みなどの感覚を作り出せることが明らかになっています。
舌痛症は、抗うつ薬によって軽減あるいは消失することが臨床的な研究によって証明されています。うつなど、メンタルへの効果ではなく、慢性的な痛みに対する効果をねらったものです。(抗うつ剤には、うつ病だけでなく、慢性痛一般に、痛みを緩和する効果を有しているためです)
服用を開始すると、早ければ4〜5日目から、遅くても1週間〜10日ほどで、痛みが緩和していきます。お薬があっていれば、約70%の方で、1ヶ月くらいで痛みが改善されます。効果が十分得られたら、さらにその後も数ヶ月程度は、痛みや不快感のぶり返しがないように服用を続けます。一生飲み続けなければならないものではありませんが、半年から1年くらいは続けた方がよい場合が多いようです。
しかしながら、抗うつ薬の鎮痛効果には個人差があります。 残念ながら「この方法で全員が治る」というところまでは治療法が確立されていません。
舌痛症のような慢性の痛みでは、痛みを0にするのではなく、日常生活の中で痛みをうまくコントロールすること、日常生活の障害になっている痛みを乗り越えて生活の質を向上させることを治療の目標とします。
私のクリニックでは治療に副作用のない、漢方薬などを使っており,心因性が疑われる難治性の舌の悩みに対して、東洋医学的なノウハウも駆使して治療に当たっています。
原因やメカニズムが分からない以上、舌痛症には、すぐに症状が消失する確立された治療法は現在のところありません。多くの医師にも舌の痛みを理解してもらえないことから、ドクターショッピング(色んな病院を転々とすること)を繰り返す患者様も珍しくはありません。もし、舌痛症を疑って受診するならば、経験豊富な症例数を治療している当院へご相談下さい。
また来院された患者様は、難治性の場合必要に応じて当院から専門医療機関をご紹介することも可能ですのでお申し出ください。